もはや「食の香港」とは言い難いけれども(後編)


確かに香港においておいしい店は激減した。そして、どんどん本当の意味での「老舗」は消えつつある。もちろん、賃貸ではなく、そこのレストランオーナーの持ち店なら問題はないのであるが、それでも、そのレストランの不動産価値が余りにも高くなり(例えば路面型のレストラン)、息子に跡を継がせるより、店を売って、その金で引退し遊んで暮らした方がマシだというケースが多くなる。特に、仕入れも含め、朝早くから夜遅くまでやっている店なら、そこの子息ですら跡継ぎを嫌がるというケースもあるし、香港の特質で、その子息がすでに海外で生活しているというケースもある。

ただ、それでも気骨のある香港人も大勢いる。そんな環境下でもなんとか、安い値段でおいしいものを提供しようと、いろいろ試行錯誤している人達もいる。高くなる不動産に対抗し、もうレストラン形態をやめ、持ち帰り専門で、狭い店舗でがんばっている店もある。あるそういう店でおいしいなと思ったら、昔、かなり有名な店でシェフとして働いていた人がやっているという話もあった。

最近の若い香港人の人達は、味音痴が増えたというか、慣らされたというか、マスコミに踊らされてるというか、昔に比べると、「なんで、こんな店に行列作るの?」という光景を見てしまう。というのは、昔は、香港人が行列をすることは珍しく、そういう店は、よほどおいしくて安い店だった。ただ現在ではその他に、ショッピングエリアなど、「この値段でこの場所なら、この店しか選択肢がない。まあ、食えることは食える。」から行列ができるケースも多くなっている。また、中国本土からの方々が増えたため、その味つけが変化し、とても、洗練された昔の香港の味でなくなった高級レストランすらある。誰が(どの層が)、そのレストランで食事をするかだ。しかし、その味付けが受ける層が、そのレストランで食事をするということであり、それが、すべてのレストランで受けるかということとは違う。

ということは、一般に香港で本当に安くて美味しい店の特徴は外から見て分かる。

つまり、意外に不動産価格が高くないところというか、ちょっとはずれたところで、おじちゃん、おばちゃん等、かなり年を召した人達(しかもいかにも昔から香港に住んでいる香港人)が行列をしているところは、あやしい。若者と比べ、「おいしい香港の時代」をまだ知っている人達だからだ。そして例えば下午茶(アフタヌーンティ)のスペシャルサービス等がないのにもかかわらず、香港の夕食には早い時間(たとえば6時とか)から人で賑わっている所なども、あやしい。そういう店に入ると、「あたり」のケースが多い。

ただ、普通の日本人の方なら、それでも見誤ってしまう。辺鄙な場所=不動産価格が安いよいう方式は全く当てはまらないからだ。そのあたりを説明すると本当に長くなり、それで、香港での出店を見誤る日本人の方々が多い。「なんでここ」と思ったら、あっという間になくなった店をたくさん見ている。そして、「ここで店を出すと、あとで、大変な目に合うのに」と思ったら、案の定、しばらくした後、設備そのままで、追い出されるというケースも昔からたくさん見てきた。十年以上前から、ある理由で、個人的には、いろいろな方々に、香港でレストランをやるくらいなら、XXXXXX(国名)で出店した方がいいですよと、アドバイスしていたが、現在、まさにその通りになった。
また味とか宣伝方法とか先述した味の理由等で見誤る日本人の方々が大勢いる。

もう「食の香港」とは言い難いとは言っても、とてもわかりにくい場所で、「安くて美味しい店」はいまだに存在するし、相変わらず、味にはうるさい香港人も多い。
いつかまた、昔の「食の香港」の名前に恥ずかしくないような時代になってほしいと切に願うのであった。

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