ホイッスルを吹く女

ある日の土曜日。たまたま金鐘(アドミラリティ)に近い方の湾仔(ワンチャイ)の方面に行く用があった。

80年代までの湾仔(ワンチャイ)といえば、意外と物騒なところであった。
よく街中で日本刀を持って走り逃げていくその筋の方を見かけたり、いかにもその筋の方が数人でパトロールをしていた。そのため逆に、ある意味、変な治安はとれていたようだ。また変なトップレスバーが存在し、よくバカな日本人がぼったくられていた。
金鐘と今や世界一の不動産賃貸料を誇り、当時も香港一の繁華街であった銅鑼湾(コーズウェイベイ)の間に位置するわけだから、80年代の頃でも、通常は、商売をやる上で「狙い目」のように見える。
その頃、ある日本人の方が、当時、若干賃料が安いからと、ショップを開いたのは良かったのだが、その筋の方から、みかじめ料を要求され、断ったら店を破壊され、泣きながら撤退したという話も聞いた。
それらは、80年代くらいまでの伝説のような話で、当たり前だが、今ではそういう話など全くない。そこを仕切っていた人も、もういない。

今では、とにかく不動産が馬鹿高いわけなのだから、このあたりに住んでいる人や道行く人が、通常、小金を持っていないわけがない。

その日、金鐘あたりからホープウェル・センターのあたりまで歩くだけでも大変に疲れた。何故ならば、その道沿いにぞろぞろ不動産の販売勧誘員が道行く人々の歩行をじゃまするからだ。
とにかくウザい。次々に人が立ちかわり、呪文のように、勧誘案件を喋ってくる。
こちとら、このあたりの昼飯でも高いから、そのホープウェル・センターのマクドナルドで安いセットを食う身分だというのに。

そのホープウェル・センターのビルの中も、不動産勧誘の人、人、人。なんだこりゃ。
とにかく気分を害したが、気を落ち着かして、そこのマクドナルドで昼飯を食っていたら、外の通路で、いきなりホイッスルの音が聞こえてくる。「ピー!、ピー!」とうるさい。しかし、なんだこりゃ?

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